
不動産を担保にする “リスク”
“不動産担保ローン”は読んで字の如く、所有不動産を担保に捧げて資金調達を行う金融サービスです。
「万が一、返済不能に陥れば大切な不動産を失うことになるから、不動産担保ローンは危険だ!」
不動産担保ローンの特性上、こう考えるのは極自然な思考でしょう。
しかし、はたして本当に不動産担保ローンは危険で、銀行融資や消費者金融は安全なのでしょうか?
破綻時の顛末
お察しの通り、不動産担保ローンは返済不能となれば、担保としていた不動産 (自宅や会社等)は貸金業者の手に渡り、競売へ掛けられ現金化された後、返済に充てられます。
一方、銀行融資や消費者金融ではどのような顛末が待っているのでしょうか。
実は、他のローンも大幅な遅延・返済不能に陥れば、預金・給料・売掛金や不動産・自動車・有価証券など現金化できそうなものは全て差し押さえられますし、保証人や連帯保証人を付けていればその方へ督促がいくことになります。(保証人・連帯保証人が弁済できなければ、その人の財産が差し押さえられる)
「最悪、自己破産をしてしまえば?」
こんな声も聞こえそうですが、財産を所持したままの自己破産は認められないので、形は違えど所有不動産は借金の清算に充てられることとなります。
つまり、不動産担保ローンが特別ハイリスク!というわけではなく、どのような借入でも返済不能となった際には不動産をはじめ所有財産は競売へ掛けられる運命にあるのです。
返済不能時の処置
不動産担保ローン

担保不動産が競売に掛けられ現金化され、そこから返済に充てられる。
銀行融資(プロパーローン)

預金、給料、売掛金、不動産、自動車などの財産が差し押さえられ競売に掛けられる。
保証人が代理弁済を求められる。
信用保証付き銀行ローン

金融機関への返済は保証会社から弁済される。
保証会社への弁済義務があるため、最終的には財産差し押さえが待っている。(銀行に比べれば分割払い等に応じる姿勢はある…)
消費者金融

返済不能になると裁判を起こされ強制執行される。
給料、売掛金、生命保険、有価証券、不動産、車などの財産は差し押さえられる。
いかがでしょうか?
最終的に債務の全責任を追わなくてはならないという意味では、どの融資もリスクは同等と言えます。
後に説明しますが、不動産担保ローンは担保があるが故に融資限度額や貸付金利の面で有利なので、まとまった資金調達をお考えなら積極的に検討するべき手段なのです。
他の借入方法との メリットの違い
「返済不能に陥ってしまったら…」
と冒頭からネガティブな話をしてしまいましたが、不動産担保ローンだからと言って特別リスクが高いわけではないことを理解いただけたと思います。
では、不動産担保ローンにはどのようなメリット、魅力があるのでしょうか?
メリット① 高額借入が可能

融資の担保=保証となる不動産があるため、金融機関は強気に貸出を行うことができます。
借入限度額は担保不動産の「路線価格の約7割」が相場値で、路線価額2,000 万円なら 1,400万円程度が借入限度額となります。
金融機関としては地価下落や相場変動等のストレスを掛け貸出額を算出しているため、路線価額の70%程度となることが多いのです。
不動産担保ローンは、万が一返済不能に陥っても担保不動産があれば回収が焦げ付くことはなく、自己破産により逃げられる心配もない。
無担保ローンの限度額はいいとこ300~500万円ですから、不動産担保ローンがまとまった資金調達に最適なのは言うまでもありません。
また、土地物件を中心に価値が安定していることから、長期ローンにも積極的です。
「担保があり、その価値が安定していること」「長期ローンが可能なこと」から1,000万円を超える高額借入が可能となるのです。
メリット② 金利が安い

「金利は回収リスクに比例する」
これは貸金業の掟であり、感覚的に理解している方も多いのではないでしょうか。
前項で説明したように担保となる不動産がある以上、元金を回収できなくなるリスクは極めて低いと言えます。
貸出額を評価額の7割程度に留めておけば、利息・遅延損害金や強制執行に関わる手数料を差し引いたとしても貸金業者が損失を被ることはないでしょう。
つまり不動産担保ローンは回収リスクが低い融資=金利が低いのです。
具体的には銀行系なら3.0~9.0%の金利が設定されることが多く、法定利息目いっぱいの15.0〜18.0%が適応される消費者金融やビジネスローンと比べると低金利と言えます。
メリット③ 審査・調達スピード

審査の柔軟性と入金までのスピードも不動産担保ローンの強みです。
融資なので借入に対する審査や使用用途に関するお伺いはありますが、担保さえしっかりしていれば問題なし!という考え方が根底にあります。
多少経営状況が悪くても、債務者が高齢であっても、重視されるのは不動産の評価額なのです。
また、審査時間についても有利です。
一般的なローンでは、経営状態はどうか?事業計画書通りに利益を出せるか? (個人なら勤め先の信頼性は?昇給の期待は?)と様々な視点で利用者を評価し、金融機関内で決済を取る必要がありますが、不動産担保ローンでは“不動産の価値はいくらか?”という点に集約されるため、専門会社では即日~数日と短期間で答えが出ます。
金融機関によっては不動産情報をツールに打ち込むだけで、限度額や条件が算出されるものもあるくらいです。
ただし、金融機関により年商・年収、借入負担率に条件を設けている場合もあります。
一般的に銀行系は審査条件が厳しい傾向にあり、詳しくは次の項目で説明したいと思います。
金融機関の分類
不動産担保ローンを利用する際にはどの金融機関を使えばよいのでしょうか?
まず、不動産担保ローンは「銀行・信用金庫系」と「専門会社(ノンバンク)系」に二分されます。
それぞれ次のような強みがあるため、一概にどちらが良いというものではありませんが、それぞれの特性を理解する必要があります。
銀行系 | 専門会社系 (ノンバンク) |
|
---|---|---|
金利 | 1.0%~9.0% | 3.0%~14.8% |
限度額 (掛け目) |
不動産評価額の 50~75% |
不動産評価額の 65~100% |
期間 | 20〜35年 完済年齢70〜80歳 |
20年 完済年齢70〜89歳 |
審査 | 厳しい | 緩い |
スピード | 1週間~1か月 | 3営業日~1週間 |
使途 | 制限有り | 制限無し |
銀行・信用金庫
銀行系最大の強みは「金利」です。
高くとも一桁台の金利であり、調達コストを抑えることができます。
不動産担保ローンに限った話ではありませんが、融資を検討する際は金利条件が有利な銀行系から審査を申込むのがセオリーです。
ただし、通常融資ほどではないものの年収・年商・返済負担率・抵当権順序…と比較的厳しい条件が課せられますし、審査時間が1か月程度を要することも珍しくありません。
“審査は通ったものの、希望する金額を借りられなかった。”
“急ぎで資金が必要で審査を待てない”
というケースも多いのです。
専門会社
先に紹介した銀行系不動産担保ローンの弱点を補う形でサービスされるのが専門会社(ノンバンク)系です。
評価額の100%近い額を融資できる、審査は最短2-3日、抵当権順位も不問…
と柔軟性が高く、積極的な貸出を行っているので、急ぎで資金が必要!不動産評価額目いっぱいまで借りたい!という方には魅力的でしょう。
しかし、柔軟でスピーディーな反面、銀行系と比較すると金利は割高で、法定金利15%ギリギリのラインで設定されることもあります。
不動産担保ローン取扱金融機関一覧

2018年3月時点で国内には1,865の貸金業者が存在しますが、その中でも積極的に不動産担保ローンを取り扱う金融機関は一握りです。
当サイトでは「専門会社系」「銀行系」それぞれを一覧でまとめましたので、目的にあわせてご活用ください。

不動産担保ローンの 賢い活用法
「割安な金利」と「不動産価値に応じた限度額」を利点として解説しましたが、不動産担保ローンは資金用途の点でも自由度が高く優れています。
個人・法人それぞれの視点から具体的なローン活用例を紹介します。
個人の方
住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、楽器購入ローン…
と、個人向けローンには様々な“目的ローン”があります。
0.数%台の低金利で利用することができますが、目的から外れた用途でまとまった資金を調達しようとすると驚くほど選択肢が狭いという難点があります。
民間機関では銀行カードローンか消費者金融程度であり、どちらも非常に高金利でありながら借入枠は300万円程度となれば御の字です。
多様な目的に活用でき、まとまった融資が可能な不動産担保融資は、子供の結婚資金や介護費用、教育ローン対象外の学費、個人間売買による自動車購入などに活用できます。
法人・個人事業主の方
“資金調達”は経営者として最大の仕事であり、最も悩ましい問題です。
本来であれば低金利なプロパー融資か信用保証付き融資で調達コストを抑えたいところですが、中小企業への風当たりは想像以上に強いのが実情。
審査が通ったとしても、必要な金額を借りられない。
調達までに 1か月近い時間を要する。
と、使い勝手が非常に悪いのです。
一方、不動産担保ローンは「調達スピード」「融資枠」「柔軟審査」の点で事業資金調達との相性が良く、経営の切り札としてのポテンシャルを秘めています。
売掛先の急な倒産による資金ショートを不動産担保ローンでカバー
設備投資や人材確保のための投資資金を準備
老朽化設備の改修のため、建物を担保にリニューアル費用を調達
など実際の事例を見ながら法人・事業における不動産担保ローン活用例をご紹介します。
不動産担保ローン借入の流れ

不動産担保ローンの利用にあたり、着金までの流れを解説します。
概ねのスケジュールを把握しておくことで、支払先との調整にも役立ちます。
STEP1 申込金融機関の選定
まずはローンを申し込む金融機関を選びます。
不動産担保ローン取扱い金融機関一覧で紹介している通り、大きく「銀行系」「専門会社系」の 2種類にわかれますが、時間的余裕があり、不動産評価額に対して融資希望額が7 割以下であれば、金利条件の良い銀行系から検討していくことをお勧めします。
一週間以内に資金が必要!不動産評価額目いっぱいまで借りたい。
という方であれば専門会社がマッチするでしょう。
銀行系と比べれば金利は割高になりますが、最短2-3営業日で融資実行まで進むなど柔軟な対応が期待できます。
STEP2 金融機関への問い合わせ
電話またはWebフォームより問い合わせ・申込みを行うのが通常の流れです。
金融機関によってはWebフォームのみで受付を行っており、内容確認後に担当者から折り返しがあるパターンもあります。
電話問い合わせの場合は、そのまま次のSTEP「仮審査」へ進むので融資希望金額やローン期間についてはある程度考えをまとめておきましょう。
STEP3 仮審査
本番審査に入る前に、口頭や簡易的な書類により仮審査が行われます。
「希望金額」「希望ローン期間」「担保物件情報」「年収(年商)」「勤続年数(設立年月日)」「使途」等についてヒアリングを受けます。
担当者はヒアリング結果をベースに貸出条件をクリアしているか否かを判断します。
この時点では担保物件の評価額が明らかに希望金額に満たない、個人向け専門なのに実は事業用途の申込だった。など明らかな不適合項目がなければ問題ないでしょう。
STEP4 本申込・本審査
仮審査が通れば続いて本申込→本審査です。
ローン契約の中で最も時間を要する部分であり、金融機関からしても債務者の信頼を見極める重要なステップと言えます。
本申込では、申込書類の記載・捺印と不動産登記簿謄本・公図・測量図などの必要書類の提出が必要です。
また、金融機関によっては申込時の来店や面談が必須となることもあります。
STEP5 結果通知・契約手続
銀行の場合、1週間~1か月。
専門会社で2-3営業日~1週間で審査結果通知があります。
審査結果による融資可否だけでなく、貸出金利や融資可能額も明らかになります。
融資条件に納得できれば、契約手続に進みます。
STEP6 融資実行
準備書類に不備が無く、契約まで完了すれば、当日もしくは翌日には資金が着金します。
不動産担保ローンは 健全な借入手法
冒頭でもお話ししたように、不動産を担保に入れることが必ずしもハイリスクに繋がるとは限りません。
むしろ、「担保不動産のお陰で高額かつ低金利な条件で融資を受けられる」と解釈すべきではないでしょうか。
住宅ローン/自動車ローンに代表される目的ローンも購入した住宅や自動車自体が担保の役割を果たしており、本質的には不動産担保ローンと同じです。
“無担保ローン”のイメージが強いせいか担保が必要な借入というだけで不安を感じる方も多いですが、本来貸金というのは担保となる物品を基準に行われるものであり、担保融資こそが健全な手法と言っても過言ではありません。
また、借入において最も重視されるべきは「金利」です。
CMや広告に踊らされ、消費者金融や銀行系カードローンを安易に契約するのは非常にリスキーで、調達コストがあまりにも割高と言わざるを得ません。
もし、担保にできる不動産をお持ちなら積極的に活用し、1%でも低い金利で借入を目指してみるのは当然の努力ではないでしょうか。
しかも、仮に無担保融資で借りたとしても、債務不履行を起こせば結果的には不動産を含む財産は強制執行により差し押さえられてしまいます。
これではあまりにも本末転倒…
せっかく担保として活用できる不動産をお持ちなのですから、その力を発揮しない手はありません。
好条件での借入が可能な不動産担保ローンを利用できること自体が、不動産を所有しているが故の特権なのです。
不動産を上手に活用した資金調達を、是非貴方も試してみてはいかがでしょうか。